ベートーヴェンの交響曲演奏についての著書もあるワインガルトナーの二度の「第九」録音のうち、全集にも収録された二度目の録音になります。おそらく、ウィーン・フィルとしても、初の「第九」全曲録音であったと想像されます。私が所有しているのはここに番号を掲載したNAXOSレーベルのCDと、日本のEMIからリリースされているベートーヴェン交響曲CD全集に収められているもの、二種類になります。NAXOS盤はアメリカ盤SPからの復刻で、上品かつ自然な残響を感じます。EMI全集は、復刻元のソースが不明ですが、こちらも素晴しい復刻で、今風な感じのマスタリングです。ただ、NAXOS盤よりもやや大きめの針音ノイズを感じます。ティンパニがどうしても引っ込み気味なのはこの時代のスタジオ録音（この演奏はムジークフェラインで行なわれています）では致し方の無いところではないかと思います。全体のテンポやフレーズの運び方は旧録音とほとんど変わりのないように感じますが、やはりオケがウィーン・フィルということで、結果としての音楽の響き方が全然違うのが興味深いところです。また、第四楽章における声楽陣の素晴しさは、旧録音が英語版の歌詞を用いていた事を差し引いても、この録音で聴き逃せないポイントだと思います。