近衛秀麿氏は1923年に渡欧、エーリッヒ・クライバーに師事、帰国後に新交響楽団（現在のNHK交響楽団）を設立しています。この録音は日本人指揮者が海外で録音した最初のもので、また、日本人初の交響曲全曲録音だそうです（ライナーノートの丸写しになってしまいました）。近衛氏はベートーヴェンの交響曲すべてのスコアを改訂し「近衛版」と呼ばれるスコアを残していますが、この録音が行なわれた1930年当時に、すでに「近衛版」を使用しているのかどうかは、私には比較する術がないのでわかりません。録音は1930年代としては普通のものだと思いますが、私が聴いたものはSP盤からの復刻で、使用した盤の状態があまり良くないのか、スクラッチノイズがわりと多めに入っています。ところどころ低域が歪む個所もあり、決して聴きやすいものではありませんが、フレーズの歌い方、テンポの動かし方は上品なもので、また、イタリアのオーケストラを振っているせいか、この曲の明るい面が良く出た演奏になっていると思います。第二楽章、第四楽章が聴きもの。