昨年初めてCD化された、1924年にドイツのポリドールで行なわれたアコースティック録音です。CDのクレジットによれば、エロイカの世界初録音となります。「運命」の初録音に遅れる事14年というわけですが、レコード会社がオーケストラ録音の設備の充実を図り始めたのは1920年代に入ってからのことだそうなので、そう長いタイムラグというわけではなさそうです。ブックレットには指揮者であるフリートの簡単な経歴（1904年に作曲家としてベルリンで活動を始め、同時に指揮者としても活動していた事、1941年にロシアで亡くなった事など）と、彼のベルリンでの演奏会記録が1905年から1937年まで掲載されています。また、フリートとマーラーのツーショット写真もあり、彼がマーラーの初期録音を行なった裏側を垣間見られるような気がします。復刻に使用されたSP盤の状態はさほど良いものではないのでスクラッチ・ノイズがやや大きめですが、刻まれている音楽情報は思ったより多く、聴きづらいものではありません。低音の楽器はもちろんほとんど聴こえませんし、残響もないので、音の古めかしさは隠せませんが、どうやら独ポリドールでは英国HMVで行なわれていたような、チューバによるコントラバスの増強などは行なっていなかったらしく、数年後の電気録音で聴けるような音像にやや近いものを感じます。テンポから感じるフリートの解釈はワインガルトナーに近いんじゃないかな、と思いました。それ以上に突っ込んだ鑑賞はちょっと私の手には負えません(^^;